省略することの美しさと緊張感、映画『ビューティフル・デイ』を観た

奥さまが歯医者に行っているうちに、おしゃれ着洗い2回とルンバの掃除の見守りを済ませ、昼飯にソース焼きそばを作って食べたら、自転車に乗ってTジョイ久留米へ。奥さまと映画『ビューティフル・デイ(原題:You Were Never Really Here)』を観た。首都圏では6月1日に公開されたみたいだけど、遅くなったとはいえ、地元の映画館で観られるのはありがたい。

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本作はホアキン・フェニックスさん演じる、元軍人で殺し屋の主人公・ジョーが、失踪した議員の娘・ニーナを救い出すというお話。主人公のPTSDが盛りすぎだろってくらいトラウマが多層で、少年、軍人、少女の人身売買捜査(たぶん)の時に心に傷を負っているため、日々、死とギリギリの精神状態に追い込まれている。

面白いのが、同居している痴呆気味の老母を介護していることで、殺し屋というキャラとのギャップが際立つ。

PTSDのせいで、フラッシュバックの挿入が多く、やや、混乱をきたしてしまうけど、その代り、暴力シーンなど、語らずとも分かるところはザックザクと省略していくところが大胆で、そこが美しくも緊張感を増していた。

奥さまはPTSDになった原因が分かりづらいって不満そうだったけど、映像で分かる程度の理解度で、十分だったんじゃないかって僕は思った。だって、主人公のトラウマをきっちり説明してしまうと、彼が過去と戦う映画になってしまいそうですもんね。あくまでも、本作は未来を見据えていると、僕は思うから。

そんなわけで、どうか、彼らが世界にとって透明な存在のままでいませんように。トラウマから逃れられますように。彼らが立ち去ったのであろう、ファミレスの座席を見つめながら思った。だって、最後に主人公がドリンクの残りをストローでズズズって啜ったシーンは、ようやく彼が見せた、人間臭い行為だったから。そして、原題を訳せば、「あなた(たち)は本当はここにはいなかった」だから。

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