稀勢の里の綱を作る力士たちの姿に胸が熱くなる

作業の合間にテレビのワイドショーで、稀勢の里の綱を作る「綱打ち」のため、二所ノ関一門の力士たちが集まって、汗を流す姿が流れた。その中には大関から陥落した琴奨菊の姿もあり、心中を察すれば胸が痛くなるのだけど、ニッコニコの笑顔で綱をよる姿が映し出されると、なんだかホッとしたというか、目頭が熱くなった。
琴奨菊の他にも、楽しそうに太鼓を叩く豪風、いつも通りオドケた雰囲気の天風、紅白の鉢巻姿が可愛らしい輝、露払いを務めることになって気合が入る松鳳山など、二所ノ関一門の団結力を感じさせる姿だった。
稀勢の里は嬉しさを隠せないようで、目尻が下がり、頬が紅潮。芝田山親方雲龍型の土俵入りの指導を受ける姿は、横綱の風格を早くも醸し出していた。
嗚呼、本当に横綱になるんですねえ。明日は明治神宮で初めての土俵入りを披露するのだけど、現地に行かれないのが、なんとも口惜しい。


毎日新聞稀勢の里の手記が掲載されていて、文章の隅々まで相撲への熱い想いと気合に溢れていた。おめでとう、稀勢の里、本当に今まで辛抱したね。あれはまだ18歳だったのかな、十両を一足飛びに駆け上がっていく姿を見て、この力士は絶対に強くなると確信して、それからずっと応援してきた。土俵で仕切りを重ねる姿に「きせのさとー!」と思いきり声援をおくった。そして、これからも応援しますからね。嗚呼、嬉しいなあ。

■稀勢の里 手記全文「私は早熟で晩成。達成感浸る暇ない」(毎日新聞)
ーー大相撲初場所で初優勝し、第72代横綱となった稀勢の里が26日、手記を寄せ、心境をつづった

 昇進伝達式や綱打ち、土俵入りの練習と続き、横綱になれた実感が徐々に湧いてきた。なかなか思うようにいかない時も我慢し、腐らずやってきて本当に良かった。つらい時期を思い出すと、少し泣けてきた。
 初場所千秋楽で優勝パレードに向かう途中、両国国技館の役員室に呼ばれた。八角理事長(元横綱北勝海)から「おめでとう。よくやった」と言われ、握手をしてビールをついでいただいた。今まで最もつらかったのは、大関に上がる前の1年間。手応えをつかんで場所に入っても勝てない。それがずっと続き、投げやりになっていた時期もある。でも優勝して最高位に立つという夢を思い出し、ぶれずに歩んだ。
 優勝には届かなかったが、昨年後半あたりから「これだ」という瞬間が結構あった。取組中ではなく、稽古(けいこ)場で四股やすり足など体を動かしている時に、ばちっとはまる感覚。だから自分はまだまだやれるし、もっと良くなる。目指すところにはまだ4割程度しか到達していない。17歳だった新十両当時の体を見ると、まるで小中学生のような体格だ。自分は昔から体つきが5〜6歳若いから、今は30歳だが、25歳だと思っている。
 次の目標は東の正横綱に就くこと。これこそが番付の頂点だから、そのためには春場所で優勝したい。以前に40歳まで第一線で闘うと言ったことがあるが、もちろんそのつもりだ。達成感に浸っている暇などない。
 歯がゆい気持ちで千秋楽を迎え、「やるしかないですよ」と何度言ったことか。それでも腐らず頑張り続けることに意味があり、諦めたらそこで終わりだ。私は早熟で晩成という珍しいタイプ。不器用だけど、一つのことをやり続ける能力は高いと思う。横綱は負けが許されない立場だが、苦しい経験が良かったと思えるような好成績を残していきたい。ここからが自分の新たな土俵人生だと覚悟を決めている。