覆い隠しておきたい歴史を掘り起こす勇気

奥さまとKBCシネマへ夫婦50歳割引きを利用して、ハンガリー映画『サウルの息子』を観に行く。
ナチスポーランドアウシュヴィッツに作った収容所で、同胞のユダヤ人をガス室に送る任務に就く特殊部隊「ゾンダーコマンド」たちのお話。強制労働が待っていると思い込み、全裸になってシャワー室に入ると、そこは戻ることができない毒ガス室。ボンヤリしか映っていない、肌色の塊の映像が強烈だ。見えないから見えることってあるんだと痛感した。ある意味、観る者を試し、鍛える映像かも。
主人公のハンガリーユダヤ人のサウルは、彼はガス室で生き残った少年(息子)を発見。少年が息を引き取ってしまうと、ユダヤ人として正式な埋葬を行いたいと執拗に願う。

ここからはネタバレになってしまうから注意なんだけど、いろんな解釈ができるなって思った。
手元にあるユダヤ教関係の資料で確認すると、ユダヤ教では遺体を火葬しない、正式な埋葬は「復活」に繋がる、ということ。つまり、「火葬(収容所ではユダヤ人の遺体を部品と呼んで焼却する)」「埋葬」「祈り」「復活」がこの映画がはらんでいるメタファー(隠喩)と関係しているんじゃないかな。それが、ラストシーン前のサウルの笑顔に繋がっているのかも、って僕は思った。

ハンガリーナチスユダヤ人の大量虐殺に加担している。それは日本人ならわかると思うが、覆い隠しておきたい歴史だ。しかし、それを映画として掘り起こしてしまったラースロー監督の勇気と努力には頭が下がる。本国、ハンガリーではどんな反応だったんだろう。今、シリアからの移民問題で揺れているしね。


映画のあとは奥さまの買い物に付き合って、天神あたりをウロウロ。親富孝通りの回転寿司屋が70分待ちになっているのには驚いた。