架空の手紙
先日、妹から某版元の編集部で働く姪について話を聞いた。20代中盤になると、そろそろ次のキャリアとして、転職、フリーランスへの道を考え始めるんだそうな。「なんかあったら相談に乗ってよ」なんて言われて、「そうねえ」なんて空返事してたけど、20代の若者が僕に相談するわけないじゃない。それでも、ぼんやりと彼女への言葉が浮かんだので、文字にして起こしておこう。
「○○さま
お母さんから、転職やフリーランスについて、考えていること聞きました。
何かあったら相談に乗ってよ、なんて言われましたが、弱小版元と編プロ、末端下請けの僕の経験は、ちゃあんとした版元で務めている○○ちゃんの将来について、ヒントにはならないと思います。逆に○○ちゃんの職場環境がどんなものなのか、僕が聞いてみたいくらいですもの。知らない、経験したことがない版元の環境なので興味あります。
そもそも、1980年代に入社して、ぼんやり働いていても給料が上がっていった、僕ら世代の大人の成功話や失敗話なんて、自分で考えて行動することを知っているであろう、令和の○○ちゃん世代にはピンとこないんじゃないかな。むしろウザいだけかもしれない。
だから、言えることとすれば、やたらアドバイスしたり、苦言を呈してくる50歳過ぎの大人は、なるべく遠ざけておいたほうがいいってこと。過去の自慢話なんてもってのほか。だったら、ジェーン・スーさんのコラム本を読んだほうが、今後の気の持ちようの指針など、どれだけ有益なことか。
30歳になる前に、きっと次の生き方を考える時が来るんでしょうね。それまでの数年間、自分に優しくしてあげてください。インプットも大切です。僕はその時期に“がむしゃらに働く俺、偉い”みたいに勘違いしていたので、けっこう後悔しています。これは、今の世代にも通じるんじゃないかな。漫画、小説、映画、アート、旅など、なんでもいいから、分からなくてもいいから。
ではでは、今年が健やかな1年であるよう、祈っています。時間通りに働くことが困難な職種でしょうから、心身ともに健康には気をつけてくださいね」