テキストサイト考

90年代後半のネット界隈はテキストサイトが主流だった。当時のインターネットは電話回線を利用していて、読み込み速度が遅く、写真1点を表示するのにも、かなりの時間がかかっていたからね。

そんなわけで、文字だけの“日記系サイト”が流行っていて、僕も「さるさる日記」なんかでポチポチと、なんてことない日常を自身の備忘録みたいに書いていた(それは今の「はてな」で書いていることと、さほど変わらない)。

最近、目にした文章をきっかけに、あの頃の画面を思い出した。雑誌の編集者として働いていた僕は、紙面の字面というものを意識するよう教えられていて、程よい改行、句読点とは? なんてことを試行錯誤していた。

そんな中、ネットを覗いてギョッとしていたのが、まったく改行せず、段落あけもされていない、文字がギュウギュウにつまったテキストサイトだ。ブラウン管のモニタに映し出される、目の前にドーンと迫る文字の羅列に圧倒されたものでした。

その多くが、文章に熱量がある。思いをアウトプットしたくてしょうがないっていう熱だ。でも、その反面、理解してもらおうっていう意志と、そこに至る想像力は感じ取れない。

思い浮かべて欲しい。目の前に50行ちかく文字が詰まっていることを。その瞬間、目を背けたくなり、そのテキストサイトの管理人さんと心の距離が出来てしまう。それが生の原稿用紙でも恐怖感を覚えてしまうけど、モニタ上でも、なかなかのものでした。

ネット上に自分の考えや思いを残せれば良い、そんな了見だったら、そんなギュウギュウ詰めのテキストサイトでもいいだろう。でも、どこかで読んでくれている相手に、少しでも理解してもらいたかったら、改行や段落あけにも気を回したほうがいい。

かつて覚えた違和感が蘇ったので、備忘録として書き留めておきます。