綿密な幻想絵画の画家と拘束と開放のコラージュ作家という元夫婦の作品展「藤野一人と岡上淑子」を観に行った

昼飯を済ませたら、西鉄電車の急行に乗って天神へ。バスに乗り換えて赤坂三丁目のバス停で降り、福岡市美術館で開催されている「藤野一人と岡上淑子」を観に行く。

藤野さんはサンリオ文庫フィリップ・K・ディックSF小説の表紙絵で知った。岡上さんは恥ずかしながら、今回の展覧会の告知チラシで初めて知った。一時期、アートな夫婦として暮らしていた二人だ。

展示は作家別に動線が分けられていて、右に入ると藤野作品、左に入ると岡上作品を歴史を追って見られる構成。縦に分割でスペースが細長いので、ちょいと見る順番を戸惑ってしまった。

藤野さんの作品は、サンリオ文庫の3作品の現物を観られたというだけでも感動したし、「聖サントワーヌの誘惑」(サルバドール・ダリなど、西洋美術でいろんな作家によって描かれている主題、誘惑と禁欲と霊的な力を同時に表現すると言われている)は綿密な秀作も観られて良かった。

また、澁澤龍彦三島由紀夫の小説の挿絵、創作ノートや日誌、小説やコラム等の掲載雑誌など、多岐に渡っていて面白かった。特に某有名女優を褒めてんのか貶しているのかと困惑してしまう、片●という言葉まで出てくる、ある意味、熱量の高い映画を観たあとらしき日誌は秀逸だった。

さらに、大林宣彦監督が25歳のときに撮影したという、藤野さんとの共同演出作品「喰べた人」も上映されていて、かなりレア(大林宣彦青春回顧録 DVD BOXに収録)でキッチュな映像も観られた。

そして、岡上さんの作品は、アイデアとセンス、メッセージが切り貼りの中に差し込まれていて、これまた見応えあり。自分の部屋に飾るために作っていた作品が、芸術家に見出されて世に出たなんて、僕たちにとっては有り難い偶然があったことを知った。

特に「長い一日」や「彷徨」「人形師」など。不穏な空気な漂う作品は、のちに「魔法少女まどかマギカ」や「新世紀エヴァンゲリオン」に、何かが繋がっていったのではないか、なんって思ってしまった。