大相撲初場所、琴奨菊の初優勝に思うこと

誰も本命にあげることがなかった。僕だって、前半の連勝を見ても、どうせまた、なんて思っていた。すいません、すいません。
でも、琴奨菊は勝ち続けた。見事な優勝だった。取り口も、がぶり寄りにこだわることなく、突き落とし、下手投げと、朴訥としたイメージとは違った、鋭いセンスを感じさせた。肩の痛々しいテーピングが取れてからだろうか、彼の相撲は明らかに進化してた。ここまで力士って変われるものかと、感心してしまう。
稀勢の里豪栄道がいつも通りの不甲斐ない相撲をとっていたのに、彼が一人で抜きん出た。そういえば、大関昇進稀勢の里を抜いて先に果たしたんだよね。
もし、地元柳川で優勝パレードがあるようなら、観に行きたい。

新聞やテレビでは「10年ぶりの日本出身力士の優勝」だと連呼している。友人のH君と一緒に行った、最初の大相撲観戦が栃東が優勝した場所だった。「一番の注目力士は稀勢の里だよ」なんて言って、応援していたけど、あれから10年たったのか。稀勢の里も30歳なんだもんな。

その間、外国人力士の活躍は凄かった。今でも生涯最高の生観戦だと思う、平成21年九月場所千秋楽、朝青龍白鵬の優勝決定戦。あの場内の緊張感、二人の気迫には、ビリビリと心身ともに震えた。人の気持ちって、見ているだけで、空気を通して、こんなに伝わるものかって思った。

琴欧州の優勝のときは、偶然、お父様たちが観戦しているマスのそばで観ていた。優勝が決まった瞬間の、あの喜びようったら、こちらまで飛び上がって喜びたくなった。

把瑠都だって、後半は怪我のせいで精彩に欠けてたけど、あのパワーったら凄かった。国技館の通路を歩いているのを見たとき、大きな立ち姿だけでも見る価値があるなって感心した。
三役に上がった力士だけじゃない、黒海、隆の山、阿夢露、栃ノ心など、下位に落ちても腐らずに相撲を取り続ける姿に感動した。時天空の怖い顔とトリッキーな取り口も、愛嬌のある旭天鵬も大好きだ。
まあ、外国人力士には、勝ちにこだわるばかり、引いてしまいがちだったり、平然と変化するとことがあって、「あれれ?」って思わないでもなかったけど、それだって、相撲なんだし、対応できなくてどうするって話ですからね。

誰が言ったか知らないが、「外国人力士しか優勝していなかった、この10年は暗黒だった」っていうニュアンスのコメントが、ネット上に流れていて「おいおいソレは違うだろう」と思った。あと、「日本出身」ってのに、やたらこだわるキャッチコピーも下品ですよ。「暗黒」だったら、生観戦、テレビ観戦を続けていてませんよ。毎場所、ワクワクしてたもの。まあ、不祥事は恥ずべきことだったと思うけどさ。外国人力士たちには、盛り上げてくれて有り難うって、感謝したいくらいなのに。一方的にヤラれていた日本人力士が情けなかっただけなんだから。
そりゃあ、僕だって悔しかったことは何回もあるけどさ。でもね、世界はソレを「勝負」って呼ぶんだから。


追記)優勝を決めた翌日(25日)の朝の更新分ではこの記事が読み応えがあるし、面白かった

「琴奨菊初V 進化する31歳、30日結婚式へ前祝い」(日刊スポーツ)

「朽ち果てたくない。新しいタカになる」。苦しい旅が始まった。ケトルベル、ハンマー投げ、綱引き、タイヤたたき。外見の筋肉を壊し、体幹を鍛える作業が始まった。何度もぶっ倒れた。でも「つらいけど楽しい。できないんじゃなく、受け入れていなかっただけだと分かった」。古いモノが落ちた。