外出による鼻ムズムズと映画「ドライブ・マイ・カー」の悪業の肯定

観たい映画であっても、西鉄に乗って天神に行ってまで、ってのは最近のご時世もあって控えていた。村上春樹さん原作の映画『ドライブ・マイ・カー』もそうで、中洲大洋へ『サマー・オブ・ソウル』を観に行った時、ロビーでポスターを眺めだけだった。

ところが、同作が欧米の大きな映画賞を受賞したうえ、アカデミー賞の作品賞にノミネートされたことで流れが変わり、久留米のシネコンでも遅ればせながら上映されることになった。

そんなわけで、早めに昼飯を済ませて自転車でTジョイ久留米へ。上映時間を勘違いして、危うく開始10分後に入場するところだったけど、トイレ時間を計算に入れていて、早めに到着したのでセーフ。

原作は短編小説『ドライブ・マイ・カー』だけど、主人公が国際演劇祭のために広島に行くあたりから、それよりも物語が広がっていく。ふんだんにチェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』の台詞や劇中劇が挿入され、『ドライブ・マイ・カー』ではなく『ワーニャ伯父さん』を観ているような錯覚に陥りそうになるほど。

広島から北海道の山村へ移動するシークエンスで、主人公たちの喪失からの再生が描かれ、クライマックスの劇中劇で人の悪業を肯定により、再生への福音が描かれる。そういえば、主人公の姓は「家福(かふく)」だけど、読み方を変えれば「いえふく」で「チェーホフ」と少し響きが似ている。

サーブ900ターボの重いエンジン音が心地良いのだけど、車内のシーンで、妻の不貞を知りながら、気づいていないふり(演技)をしている主人公が、チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』から「レトリック(修辞)ははごまんとあるが、ロジック(論理)はゼロ」という台詞を吐くシーンが刺さった。

帰宅すると夜まで鼻がムズムズしていた。自転車で走っているときに早くもスギ花粉を浴びていたのかもしれない。

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