負の感情を抱いて生きることへの救いと癒やし、ファンタジーの仮面を被ったカルトなグロ映画「ミッドサマー」について

スーパーの朝市の買い出しを省略して、西鉄に乗って福岡天神へ。奥さまのリクエストで、中洲大洋映画劇場にてアリ・アスター監督の新作『ミッドサマー』(原題:Midsommar、スウェーデン語で夏至祭“ミィドソンマ”の意)を観る。

前作『ヘレディタリー/継承』で斬新な恐怖を体験させてくれるホラー映画だったけど、今回はカルト映画寄りの内容かな。

冒頭、精神疾患を抱えた妹が両親を巻き添えに無理心中し、自身の心の病と家族を失った心的衝撃に苦しむ大学生のダニー。その翌年の夏、恋人とその友人たちと一緒に、90年に1度しか開催されるという夏至祭を見物するため、スウェーデンのホルガという集落を訪れることに。

美しく幻想的な風景や人々に魅了されるダニーたちだったんだけど、カルト集団的な珍妙(嘘や欺瞞による)な風習を体験するごとに、それらは疑いと恐怖に代わっていく。そして、遂に、とんでもない祭りの行為を目の前にして……、って展開。

展開はグロいながらも想像の枠は超えず、それほどの驚きはなかった。ただ、集落の人々が感情を共鳴させていく、イニシエーション的な高揚感は恐ろしかった。

特にダニーが抱えていた負の感情が増幅され、住人たちに吸い取られいくようなシーンは、とんでもないことを見せられているような気分。極端なほどの感情の吐き出しが、人の心を破壊していくような。大いなる共感って怖い。

でも、恐れを感じさせるとともに、アリ・アスター監督は「負の感情を胸に抱いていく」ことへの赦しと癒やしを投げかけてくれたような気がする。意地悪そうな顔して、実は優しい。そんな映画でした。

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